
ジャン=ミシェル・オトニエル展

グランパレの正面にあるプチパレは、グランパレと同じく1900年のパリ万国博覧会の折に建設され、現在も1900年前後の美術工芸品を中心に展示しているが、2013年からは定期的にコンテンポラリーアーティストを招聘して展示しグランパレの正面にあるプチパレは、グランパレと同じく1900年のパリ万国博覧会の折に建設され、現在も1900年前後の美術工芸品を中心に展示しているが、2013年からは定期的にコンテンポラリーアーティストを招聘して展示している。
今年の招聘アーティストはジャン=ミシェル・オトニエル。
2020年10月には六本木・ペロタン東京で個展を開催しているから馴染み深い人も多いだろう。私もコンテンポラリーアート・コレクターのコレクションに、さりげなく彼の作品が置かれているのを何度目にしたことだろう。
しかし、うかつなことに、最近まであの有名作品のアーティストと同一作家ということに気づかなかった。

それはパレ・ロワイヤル前にあるLe Kiosque des noctambules。
パリのメトロも1900年のパリ万博の際に開通し、エクトール・ギマールがアールヌーボーの建築でその出口を飾ったのだが、2000年の開通100周年の折、オマージュとして、新しい作品で出口を飾ったのがこちらだ。
もはやすっかりパリの街角のかかせない一部となっていて、もっと昔からそこにあるかのように考えていた。現在57歳のオトニエルはわずか30代でこのような栄誉を担ったことになる。もちろんこの作品は彼に国際的知名度をもたらした。
彼の今回のプチパレのプロジェクトを紹介した各メディアの記事では、フランス語でinvestir という動詞が使われていた。これは投資するという意味のほかに、占拠する、そっくり譲り受ける、という意味がある。
1900年から存在し古典的な建物と見なされつつあるプチパレは、まさに今回オトニエル作品に席巻された。館内至るところでその作品が効果的に展示され、それは正面階段や美しい中庭にも及ぶ。







建物と、自然と、これほど調和したコンテンポラリーアート作品を私はほかに知らない。プチパレを訪れた日には、雨が途中から降り始めたのだが、中庭の池の水面に雨がぽつぽつと輪を広げていく様も、まるで計算された演出であるかのように、作品群を引き立てていた。
90年代からの数十年間、多くのアートが「目を背けたくなるようなイメージを観る者の前に突き付けて問題を提起する」という手法を取ってきたことを思うと、彼の作品は同じだけの時間、常に第一線で評価されてきたことには大きな意味があるだろう。
(裕)