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ウクライナ危機の中で

ウクライナ危機の中で

ウクライナへのロシアの侵攻はずいぶん前から懸念されていたが、まさか本当に起こってしまうとは信じられない思いだ。

今こう書いている間(3月3日現在)にも状況は刻々と変化し、多くの犠牲者が出ている。

ウクライナの人々、現地に親類や友人がいる人にとっては耐え難い時間が続いていることだろう。

 

以前かなりインターナショナルな会社にいたので、ロシア人やウクライナ人の同僚やアーティストとも、日常的にやり取りがあった。

もちろんウクライナ人とロシア人の間の確執などというものはなく、両者ともロシア語で理解しあえて好都合、むしろ潤滑なやり取りが両者の間にあった。

 

しかし美術品を輸送する、という現実的な業務の前では両国の間に圧倒的な差があった。ロシアからは物品を出すのもロシア国内に入れるのも、非常に難しいのだ。まず法人顧客でなければ物品を届けることはほぼ不可能で、ロシアから国外に出すにも、税関で何か月も待たされることもある。

 

その点でウクライナからの輸送は他のヨーロッパ諸国と同じか、逆にスムースなくらいだった。そして、あくまでも一般的傾向であるが、旧ソビエト時代からの重厚な美術教育の基礎がうかがわれ、両国とも非常にアーティストの質が高い中、ウクライナアーティストの作品は特に色遣いが明るいものが多く、日本人にも人気が高かった。

 

 

大倉アーツでは通常のオンラインのプラットフォームギャラリーと違い、実際にアーティストや作品を確かめ、輸送が確かな地域からお届けしたいと思っているので、フランスとその周辺のヨーロッパのアーティストの作品を中心に紹介しているが、ウクライナにはぜひ一度足を運んでアーティストを開拓したいと思っていた。私の中ではすでにヨーロッパの一部のように感じていた国で、こんな理不尽な侵略戦争が始まるとは想像していなかった。

(デモ参加中のオルガ。本人提供。)

大倉アーツの代表的なアーティスト、オルガ・ノヴォハツカはパリを拠点に活躍しているウクライナ人だ。この危機が始まった頃から彼女のことを心配してきた。彼女の家族はまだウクライナにいると言う。彼女は非常にストイックに制作活動に打ち込む人だが、きっと毎日落ち着かない気持ちで活動していることだろう。一方で、ソーシャルネットワークで反戦とウクライナへの援助を積極的に呼び掛けている。

パリでは彼女のアトリエからほど近いサン・ミシェル広場で大規模な反戦デモが行われた。ウクライナ人もロシア人も参加していたという。

 

彼女の家族や、同胞のアーティスト達の無事を願わずにはいられない。ウクライナ国民とロシア兵士たちが殺しあうような状況が一刻も早く終わることを強く願う。

そして全てのウクライナ国民に平和で希望に満ちた未来が戻ってきてほしい。

サン・ミシェル広場の有名な噴水前のデモの様子。悪を糺す大天使ミカエル(サン・ミシェル)が象徴的だ。オルガ提供。

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