
アーティスト・エピソード 病院におけるアートプロジェクト
パリ15区の有名な小児科専門病院ネッカー病院。
大倉アーツの提携アーティストのひとり、フランス在住のデュフォ恭子は、ここで入院する子供たちのために壁画を描くプロジェクトに参加したことがある。
プロジェクトは子供が入院中に、病棟があまりにも無機質で寂しいと感じた一人の母親の発案で始まった。そしてデュフォ恭子の出身美術学校が卒業生に呼びかけたことがきっかけでプロジェクトに参加したという。


アーティストが複数で一つの作品を完成させるのではなく、それぞれの持ち場が決められて都合に合うとき、特に、病室病室が使用されていない夏の間に現場に行って作業するという方法だったが、多くのアーティストが関わり、素晴らしい作品を創り上げて病棟を明るく希望に満ちた場所にすることになった。
社会的な視点を常に忘れず、しかも絵本作家としての実績も築いていた彼女にとって、このプロジェクトへの参加は自然な流れであったと思うし、彼女の心躍るような作品を眺める機会に恵まれた子供たちにとっても、まさに幸運な邂逅だったろう。出来上がった作品の写真はないというが、どれほどの数の子供たちを慰めたことだろう。
残念ながらその病棟はすでに建て替えられてしまい、今その作品群を観ることはできない。
だが大倉アーツではもともと、医療分野の施設(病院、ホスピス、歯科医院)で長期療養中、治療中の患者に安らぎや癒しを与えられるようなアートを普及させたいと考えており、アーティストがサスティナブルにこういった活動を続けられるよう、病院とアーティストをつなげるプロジェクトに今後も積極的に関わっていく予定だ。

壁画の原画となった作品。