
シャルダンの名画はルーヴルに入るのか 美術品と輸出申請
あなたが外国で美術品を購入したとする。
そのまま手荷物で持ち帰ろう、なんて思っている場合は気を付ける必要がある。
美術品を国外に持ち出すとき、国によっては、輸出申請を行わなくてはならない。
フランスでは現存の美術作家の作品の場合、原則としてこの申請は必要ないが、国によっては、作品の年代、価値に関わらず、必ず申請を行うところもある。
イタリアやブルガリアなどがそうだ。特にイタリアでは、いまだに申請者が窓口に出向いて申請を済まし、出来上がった書類を再び取りにいかなければならない。処理までの遅れも顕著だ。私が前職で、世界各国のアーティストの作品を扱っていた時、イタリアからの作品輸出にはいつもお客様に丁寧に説明して、遅れへご理解を頂かなければならなかった。
先日の記事で報じた、シャルダンの作品「野イチゴの籠」の購入者が明らかになった。
この作品を32億円という価格で落札したのはアメリカ、テキサスのキンベル美術館だ。ところが実際にこの美術館で飾られることになるかはわからない。
フランスのルーヴル美術館がこの作品を「国宝」と認定し、輸出に待ったをかけたのだ。このため、キンベル美術館の輸出申請は凍結された。
一般から資金を募り、この作品を買い取って、ルーヴルの、すでに41作品あるシャルダンのコレクションに入れるつもりだ。ルーヴル美術館が手に入れた猶予期間は30か月。
2年半だ。
キンベル美術館は、輸出許可が下りないことを予想したうえで、あえてオークションに打って出たという。以前ニューヨークの画廊で、この作品が展示されたときに見たという館長は、「この作品は個人のもとにとどまっていてはならない」と語っている。となれば、ルーヴルのコレクションに入っても、目的の半分は達成されたことになるのだろうか。
