
映像没入型展覧会
現在ヨーロッパで流行しているのが、映像を投影する没入型(イマ―シブ)の展覧会だ。
パリでは2018年にアトリエ・デ・リュミエール(光のアトリエ)というデジタル展覧会専門の美術館で始まり、定期的に開催されている。
2019年に特に話題を呼んだゴッホの展覧会は、現在日本でも角川武蔵野美術館で上映中だ。
アトリエ・デ・リュミエールの展覧会では、作品世界が壁面だけでなく、天井、床、鑑賞者の上にも投影され、鑑賞者はまさに自分が作品の中に入り込んだような一体感を得られる。
これは、美術展だけでなく、モナコの海洋博物館などでも採り入れられている。小規模であっても全方向の投影があり、自分も足元にも海や砂浜が見えることにより、ヴァーチャルに体験できる、効果的な方法だと思う。
あらゆる年齢の訪問者が、言語情報からだけでなく、視覚、感覚的に体験できるわけである。
考えてみると、ここ10年くらいで、ヨーロッパの歴史的建築物、特に大聖堂などに光を投影して、生き生きとした映像世界を見せる、という催しは一般的になってきた。
リヨンやストラスブールなどの地方の大都市だけでなく、今や中規模の都市でも、建物にぴたりと合った、映像の特別制作をしている。
これらは屋外で、街にひとを引き付けるための、自治体主催のもので無料であるのが普通だ。
こういった流れからみると、室内の美術展として、有料の投影に特化した美術イベントが普及していったのは自然な現象と思われる。
ブリュッセルでたまたま「フリーダ・カーロ」をテーマにした2つの没入型展覧会が同時に開催中だったので、次回は両方とも試したうえでの体験比較報告をしたいと思う。
Summer ’22