
フランスの夏の飲み物
夏ももう終わり。パリでは肌寒かったり、雨が降る日も増えてきたが、まだまだ日も長いし、テラスでドリンクを楽しむ人が多い。
日本ではまだ暑い日が続くことだろう。
そこで、フランス人に人気の夏のドリンクをご紹介しておきたい。
一般的に、夏に最もよく飲まれるのは、何と言ってもロゼワインだ。
季節が夏めいてくると店頭に並ぶが、今年は5月から猛暑が続いたので、販売も前倒しになり、過去最高の販売量だったようだ。
ロゼは赤や白ワインに比べて非常にカジュアルな飲み物として位置づけられている。
肉には赤、魚介類には白、と一般的に言われるが、ロゼの場合はそんなことを気にする必要もなく、どちらに合わせてもよい。バカンス中の真昼間に冷たく冷やして飲む人も多い。
もしあなたが白ワインやシャンパンに「よく冷えていないから氷を入れたい」などと言おうもののなら「野蛮人」と見なされて、もうフランス社会でご招待の声がかかる望みはないが(嘘です。フランス人なら面と向かって「野蛮人」と言うが後には引きずりません 笑)、ロゼに限っては許される。
南仏ではパスティスというアニスの香が付いたお酒が伝統的に根強い人気だ。40度ある強いアルコールに冷たい水を加えながら飲むのだが、水を加えた後にあっという間に白濁するのが見ものだ。
南仏の気候に合うこのお酒は、非常に強い風味があるので、フランス人でも苦手な人は多い。
ロゼ以外でパリで夏によく好まれる飲み物はスプリッツ。これはアペロルというイタリアの食前酒をベースとしたカクテル。イタリアの発砲ワイン、プロセッコと炭酸水も入り、清涼感にあふれている。アペロルはカンパリに少し似ていて苦いが、甘みもあり、プロセッコと合わせると苦みと甘みのバランスが非常によく、大きめのグラスに入った冷えたオレンジ色のカクテルは夏の太陽に映えることこの上ない。ここ数年、フランスでは特に流行している。
スプリッツと双璧をなすのが、こちらはクラシックなカクテル、モヒト。
ラム・ベースでライム、ブラウンシュガー、炭酸水のほか、フレッシュなミントの葉をふんだんに使って用意される。
フランスの夏にはミントが欠かせない。イチゴやデザートにもミントの葉を添えるし、アラブ系の人が多く住むフランスでは、生のミントの葉を使った甘いミントティーは一般的であるので、大きな束でお店で売られていたり、家庭で栽培したり、ミントは身近な存在だ。
スプリッツは、リキュールを使わないと始まらないが、モヒトの場合は、ラム以外のすべての材料で作った、ノン・アルコールバージョンもとても人気だ。ノン・アルコール・カクテルはバージン・カクテルと呼ばれ、若い世代のアルコール離れが少しずつ進んでいるフランスでは、カフェのメニューの中でも一般的になってきた。アルコールを入れないのに、カクテルを飲む必要はないのでは、と思う方もいると思うが、生のミントの葉とクラッシュ・アイスたっぷりのバージン・モヒトは暑さしのぎにお勧めだ。
大倉アーツでは新しい季節への新しいインスピレーションをご紹介する、A New Beginning コレクションの展示が始まりました。

右がスプリッツ。
