
フランスの住まい
古い家の人気
我が家は20世紀初頭に建てられた、100年以上も経つ家だ。
1900年前後のベル・エポック、アール・ヌーボー、オスマニアン様式などが大好きな私は、自分で家を購入するときはその時代のものが欲しいと思っていた。
フランスでは基本的に家は「建てる」ものではなく、すでに建っているものを「購入」し、「手を入れる」のが普通だ。
「古い」と言っても19世紀の家から1960年代、70年代、まで様々だ。(80年代などは「最近の建物」と言われる。)
特にパリの中では1900年前後の建築が多く、価値も高い。水回りなどに大きな不安を抱えつつ、こういった優雅なアパルトマンに住みたいと願う人は多い。
変わる家の持ち主
郊外では新築のマンションなども増えてはいるが、やはり大多数はすでに建っている建物の購入だ。
パリ近郊では、定年になったら南に引っ越して余生を過ごしたいという人が多いから、60代くらいの、子供たちが独立し、晴れて退職した世代が、30代くらいの子育て世代に家を売って引っ越していく。だいたい30年くらいのサイクルで持ち主が変わることになる。このあたり、フランス人は家に固執せず、自分の人生設計において、どこに住むのが大事かを重要視する。
歴史ある建物の場合、ファサードだけ残して、建物を完全に取り壊してから改築するケースもあるが、だいたいは購入者が前の持ち主が住んでいた状態のまま購入し、間取りを変えるか、間取りもそのままで表面だけに手を入れて、改装だけする。オスマニアン様式の古い漆喰装飾のある空間に、家具などは完全にコンテンポラリーなデザイナー製品を置く人も多い。
フランスの改装工事
我が家は一戸建てだが、いろいろな建築要素は建設当時のままながら、前の持ち主がかなり近代化していたので、入居時に大掛かりな改装工事をする必要はなく、一部の壁の塗り直しのみ。
20世紀初頭の古い建物は、ひどい場合には電気の回線を全部引き直したり、全ての窓を一重から二重サッシに変えたり(二重にするのは寒さの厳しいフランスではかなり重要)、木の床を全部張り替えたり、と大掛かりに手を入れなくてはならなくなることも多い。購入費用と同じくらい、改装費用がかかることも、ままある。
さて、我が家の改装、主要な場所、壁の汚れがひどい部屋などは、壁を塗り直したが、住んでいるうちに傷みがひどくなっていったり、毎日眺めるうちに気になっていった箇所もある。玄関ドアもその一つ。その塗り直しを、人に頼まずに自分たちでやってしまう、というのは実にフランスらしい対処法だ。何しろフランスのホームセンターというのは、家が一軒建てられてしまうくらいのものがそろっているのだ。
この日曜大工「ブリコラージュ」について、次回お伝えしたい。