
フランスのオークション会社 Artcurial
先日、パリのオークション会社 Artcurialの20周年記念レセプションに招待された。
シャンゼリゼのロンポワン、1等地にある美しい建物だ。
Artcurialはもともと、ロレアル・グループの会長フランソワ・ダル所有のアートギャラリー兼美術出版社だったが、2002年ニコラ・オルロフスキーがダッソー家と共同で、ロレアルからArtcurialを買収し、オークションハウスとして再スタートを切った。
2000年7月10日の法改正によって、フランスにおけるオークション開催に関するオークショニアの独占権が失われたことを受けての動きだった。同時期にクリスティーズ、サザビーズもフランスへの進出を果たしている。

もともと、フランスの競売人(オークショニア)のシステムは英国などと全く違っている。
英国のクリスティーズやサザビーズでは、いわゆる会社の組織の中で、オークショニアと呼ばれる、実際にオークション会場で競りを取りしきり、ハンマーを叩く人は、会社で訓練を受けた社員の一人だ。
もちろん、場の空気を読み、制する能力は誰にでもあるわけではないから、ある程度の選抜はある。私のいたときのクリスティーズでは、オークショニア職は会社の花形で、名誉ではあるものの、だからと言って、特別な待遇があったわけではなかった。エキスパートがオークショニアも務める、という、いわば兼業でやっていた。
直接の上司がオークショニアで、いくら高額のオークションを取り仕切っても変わらない、給料の安さをぼやいていたのを思い出す。

Artcurialのコンサルタントの女性と。
しかし従来フランスのコミセール・プリズーアと呼ばれる競売人たちは、言ってみれば、一人一人が、エキスパートなどスタッフを抱え、オークションを運営するための会社組織を抱えるトップだった。
その分野の専門知識と共に、法学も修めなければコミセール・プリズーアにはなれない。難しい資格ながら、そのハンマーのもとに叩き出されたプライスは、コミセール・プリズーアの利益となり、その分配も自由に決められる。
そういった従来の競売人システムを緩和することは、当然ながらコミセール・プリズーアからの反発も大きかった。
国際的大手オークション会社の進出の中で、新たなスタートを切ったフランスのArtcurialは、20年の時を経て、記録的なプライスを達成し続け、順調な成長を続けている。
フランスの会社が、英国的なオークションのシステムで運営されることには、批判や懐疑も多かったのだが、クリスティーズやサザビーズに遅れを取ってはいない。
やはりフランス人は、フランスのオークション会社に大切な所蔵品を託すということが、確認できた機会でもあった。
