
PARIS+ by Art Basel
毎年10月はパリのアートシーズンだが、今年は大きな変化が起こった。
去年FIACがグラン・パレの改装により、グラン・パレ・エフェメールに移ったことよりも大きな変化だったかもしれない。
パリについにアート・バーセルが進出したのだ。
そして、期間中アート・シーンの中心地となる、グラン・パレ・エフェメールを押さえて、FIACを追い出した、ということは前から話題になっていたのだが、結局代わりの場所で開催されることもなく、47年間、主要な国際アートフェアであったFIACは消滅してしまった。
一方、FIACの常連は同じ場所の同じ位置のブースで、例年と同じ期間PARIS+ で展示することになったのだから、訪問客にとって、あまり変わったようには見えなかった。
私たちは金曜の夜にPARIS+ を訪れたが、なんと閑散としていることだろう。

Ai Weiwei (艾未未) のインストレーションは伝統的な中国の青花紋の壺の形を取りながら、人民を蹂躙する戦車などを描写した印象深い作品。
初日の夜ではないにしても、金曜夜ならば、仕事帰りに寄ろうというパリジャンたちが押しかけてもいいように思う。(パリの人は週末はセカンドハウスでゆっくり過ごし、パリにはいない、という人も多いのだ)
一番奥のカフェテリアは開いていたが、メインホールでシャンパンを売るカートもなく、カフェは閉まり、寂しいもので、ロンドンやニューヨークのアートフェアの活気が懐かしくなった。
ところが一角だけ、人が押し寄せているところがある。
どんな話題の作品だろう、と思っていると、それはマクロン大統領であった。
笑顔を振りまきながら、一つ一つのギャラリーを丁寧に見たり、ギャラリー主人やスタッフと会話をしたり、そのたびにひと区画はセキュリティーによってブロックされていた。
居合わせたビジターたちは概ね興奮して写真を撮りつつも「他にすることがないのかねえ」といった揶揄も聞かれた。
何しろ大統領は結局、8時の閉館時間を超えても留まり、普通のビジターたちが追い出されても、2時間ほど滞在したのである。
彼がアート愛好家ということもあるが、このスイスの国際的なオーガナイザーのパリのアートシーンへの進出は、マクロンにとっても、おろそかにはできない大きな意味を持つということだろう。




