
フランスのブラッスリー
フランスの飲食店の形態のひとつにブラッスリーというものがある。
ブラッスリーにはビールの醸造所という意味もある。
現在のブラッスリーでビールも醸造しているところはほとんどないが、ビールと食事を両方提供する場所として普及したのだから、ビールと縁が深いのは確かだ。
1870年の普仏戦争でアルザス=ロレーヌ地方がプロイセンに割譲された後、アルザス=ロレーヌ地方に住む人がパリに移り住みブラッスリーを開いたというから、ビールとの縁の深さも、シュークルートなどのアルザス料理を得意とするところが多いのもうなずける。
一方、典型的なフランス料理を得意とするブラッスリーでは、肉料理のほかに、牡蠣などの魚介類を供するところも多い。
牡蠣は3つ、6つ、9つなどから注文でき、ワインのようにいろいろな地方のものを楽しめる。
海のないアルザス地方の料理を出す一方で、新鮮な魚介類を謳うのは、なんとなく矛盾を感じてしまう私だが、フランス人にとっては、ブラッスリーでアルザス料理と魚介類を同時に楽しむのは、両方とも典型的なブラッスリーのメニューで、違和感がないらしい。

バスティーユにあるブラッスリーBofinger

パリにおけるブラッスリーは1900年前後に最盛期を迎え、多くは典型的なアールヌーボーのスタイルで装飾されている。ガストロノミーな高級レストランに比べると、ブラッスリーは大勢で集まり、ガヤガヤ話しつつ楽しめる、もう少し気軽な飲食店、という位置づけだが、今も残るアールヌーボーの室内に身を置くと、非常に贅沢な気持ちになれる。
ブラッスリーのもう一つの特徴は、営業時間の長さだろう。
フランスのレストランは昼は2時か3時まででいったん閉めるが、ブラッスリーはもう少し遅くまで開いていたり、夜もかなり遅くまで注文を入れることができる。オペラなどの観劇の後に寄るのにも適しているのだ。
そして忘れてはいけないのが従業員たち。
礼儀正しく、かしこまっている、というよりは、せわしなくも陽気にテーブルの間をサーブして回るウェイターたちとの会話も、ブラッスリーの楽しさだ。
Bofinger
5-7 Rue de la Bastille, 75004 Paris, France
毎日営業
大倉アーツのクリスマス・コレクション、始まりました。




